No.10 GEFFRYE Museum

Geffrye Museum(ジェフリーミュージアム)はイギリスの室内空間・装飾を専門とし、17世紀以降の各時代の室内空間を年代ごとに再現、紹介している珍しい博物館だ。もとは当時のロンドン市長であり金物商としても財を成したSir Robert Geffryeの遺言によって年金生活者や未亡人の救貧施設として1715年に建てられたものだ。20世紀の生活 スタイルを更に詳しく紹介する目的で 1998年 に増築オープンしたGeffrye Design Centreでは、セミナーや教育的プログラムを持つほか、企画展による地元の家具、クラフト作家の紹介もおこなっている。外観は一見パブリックスクールっぽくてバナーがなければ決してミュージアムとは気付かない。実際この前をバスで何度も通りながらここがGEFFRYEであることを教えてもらうまで知らなかった。

広々とした芝生の前庭があって気持ちのいい敷地。裏側には一般に公開しているハーブ園もあり(冬期はクローズド)。ところで、入り口は???正面ではなく右写真の左隅の小さなトビラ。どこ?わからんよ。


←こんな感じで時代ごとに室内の様子が再現されている。およそ100年ごとに時代が進んで行くが、どこかで劇的に変わること無くじわりじわりと少しずつ変遷して行く様子がヨーロッパの時間の流れを感じさせてくれる。→デザインや室内装飾関係の雑誌が閲覧自由になってる。


1998年に増築されたGeffrye Design Centre。古い棟に食い込むように建てられた近代的な建築だが美術館正面からは全く見えない場所にある。イギリスはやはり古いものが大好きみたいで建築にしてもこうした古い部分を極力のこしつつ、新しい部分をドッキングみたいなのをよく見る。なにもこうした増設ものじゃなくても、新築だけどレンガ+ガラスカーテンウォール+鉄骨むき出しみたいな建築もよく見かける。素材の見せ方なんかはとてもじゃないが洗練されてるとは言い難いが、フォスターの一連の超近代的建築もそれはそれでイギリスっぽいが、こうしたどことなくドンくさいセンスの建築の方がボクにはとてもイギリスっぽく映る。

建物同士のジョイント部分を中から。写真では見えないが、こんなんで大丈夫?というようなジョイント部のシーリングの仕上げ。細部の仕上がりの美しさなんかには全く配慮してない感じ。家の近所の建設現場でも建材も道具もほったらかしで帰ってしまうし、基礎のコンクリートはグニャグニャだし‥精度なんて気にしてないかのよう。


一角にはBalzacソファをはじめ、そろぞれの時代の椅子やスツールが展示されている。このBalzacも座ってOKなのでもう真っ黒。個人で使ってここまで薄汚れることはないと思うが、デザインミュージアムにしてもここにしても試しに座れるってことは重要な事だと思う。中には姿はいいけど座ると頼りなくてイケナイ、みたいなのもあって、デザインを「体感」できるってのはいいことだ。

今日の本当の目的は地下のギャラリーで開催中のシンプルでウィットに富んだ作品で知られるデザイナーのMichael Marriottのインスタレーションの取材。無名なれど機能的で美しい道具や他人にとってはがらくた同然(?)のものからデザインマスターピースまで彼自身の私物を一同に集めた展覧会でまるで個人の室内のよう。しかしこれには、スタイル優先で完璧主義的な現在のデザインの風潮に対する彼独特の視点からのアンチテーゼが感じられた。そうそう実際の生活ってこんな感じでショールームの雰囲気とはだいぶ違うよな‥みたいな。かっこいい家具やデザインものが自分の家に来た途端、ショールームで放っていた輝きを失うってことはよくある。そのギャップを埋めるのは誰の仕事なんだろう?と考えさせてくれる展覧会だった。ちなみにこの展覧会については次号のデザインニュースでデザイナーの堤麻衣子氏の記事として登場します。


 

 

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18 January, 2003