Contact detail

作品「Latency」は、プロダクトデザインのプロセスにおいて、デザインの最終評価用のサンプルモデルを制作するために開発された、レーザー技術と特殊な樹脂を用いて三次元CADデータに基づいて造形物をそっくりそのまま三次元の立体物に出力する、ラピッドプロトタイプというシステムを用いて制作された。

漆の造形においてもっとも初期の作業はなんらかの素材を用いて、胎となる立体物を造形することであり、その後比較的長い時間を要して胎の成形/下地仕事/中塗り/上塗り/磨きといった行程を経なければならない。これは作業の最終段階まで継続しうる魅力を持った胎の形状を、最も初期の段階で決定しなければならないことを意味すると同時に、一度に平行して作業することのできる作品の数が、陶芸のような他の造形手法に比べて格段に少なくならざるを得ないことをも意味する。必然的に、多くのなかから取捨選択して作品を決定するという、工芸における「吟味/選択」という重要なプロセスをあきらめざるを得ない。私はこれまで、この問題を克服するために、胎の成形から中塗りまでを一つのプロセスに凝縮する、早くて簡便な胎の造形方法を模索して来た。また、漆の独特な表面の質感は、限りなく澱みない曲面にこそ現れるという視点から、布のテンションや空気の負圧などの「自然で無理のない力」を借りて滑らかで澱みない曲面の造形手法を模索して来た。つまり「滑らかで澱み無く、かつ簡便で早く造形する」ということが私の漆造形における重要なテーマなのである。この点において、三次元CADはコンピュータの中で完全に重力から解放された空間のなかで数学的に完全に滑らかな曲線/曲面を作り出すことができ、ラピッドプロトタイプでその形状を早く簡単に造形できるということは、私の漆造形のテーマに完璧に合致するものである。

アーティストインレジデンスとして一年間のイギリス滞在中に制作した一連の作品では植物というユニバーサルなモチーフを基に、そこから得られる有機的な曲線を要素とした造形を試みた。植物の写真を読み込み、そこから有機的な曲線を抽出し、その曲線群から自動的に曲面を生成し、三次元立体のデータとして出力するといった一連のプロセスはすべてコンピュータ上で行われた。そこからラピッドプロトタイプで得られた造形物に漆を施すという行程で作品は制作された。ヨーロッパで工芸とデジタル技術の融合による新たな工芸表現のあり方として主にHybrid Practiceと呼ばれる分野に於ける、漆造形の可能性を模索中である。

Home See exhibition PDFをダウンロード

 



[URUSHI] [Kenji Toki] [Current project] [Rapid prototyping]
Research
Press

[Diary in UK] [Home] [Infomation] [Profile] [Artworks] [Research] [Articles] [Blog] [Press] [Studio]

mail@kenjitoki.com   copyright@ 2013 Kenji Toki@ Kenji Toki Studio