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98/11/30 秩序

美術表現というものが、万物と人間の関係において既存の秩序から作家独自 の視座によって新たな秩序へと置き換えられるための手段だとするなら、 その作品は置き換えられる前のなにがしかの秩序を連想させずにはおかないはずだ。 例えば木というものを考えてみる時に自然(既存)の秩序にしたがえばそれは主に 山や森林に存在し、倒木でないかぎりその幹は樹皮に被われ、枝葉を茂らせ、花や実 をつけ静かにしかし確実に生命の息吹きを脈々とたたえているであろう。人間と出会う ことがなければ恐らくは何も変わらないこれら木々の秩序は、人の手によって切り倒され、 建物や家具、様々な道具に姿を変えられ人間の支配する新たな秩序に組み込まれて行く。 そしてときとして彫刻家の手によってさらに新しい秩序へと置き換えられて行く。 この時点に於いて”新しい”と感じるということはその作品から、その木というものが もともと具えていた”古い”秩序を連想するからであり、その作品の存在意義はその既存の 秩序なしには語れない。そう考えてみる時に工芸の存在意義とはいったいなんであろうか? 特に現代工芸と呼ばれるジャンルの本来目ざすべき目的はなんであるか?前出の例にならう なら、用を具えた道具と人間とそれらを取り巻く生活の在り方という既存の秩序にとらわれない、 存在そのものに焦点を合わせた、”用”や生活習慣とは基本的には無関係な場において発生 する新たな秩序の在り方を探る、という言い方ができるかも知れない。 しかし果たしてそれで充分なのか?
                                  土岐謙次

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