99/1/18 ハリボテ
そこに現れるものが明確なマッスを持ったものの場合、その中身のもつ意味は非常に重要 である。なぜなら人間は物質に対する先入観を経験的に持っており、その意識はその物質
を取り巻く空気にも色濃く作用する。たとえその表面が本来の姿が露呈しないように巧妙 に隠蔽されていたとしても事実を知ったときに人間はその印象を自らの先入観に従って本来
のものに対する印象に置き換える(舞台等にみられるようなハリボテの岩にふれた時に誰も が感じるあの感覚)。結果としての作品を語るときにそこに至るプロセスは、作家の素材に
対する考え方や姿勢を表わすものとして非常に重要で、なぜその素材でなければならないのか、 なぜその形でなければならないのか、つまり胎となる素材の具える必然性が必ず存在する。
木を用いて石のような表現はできないし、石を用いて革のような表現はできないように素材は 素材なりの必然性を持つ。作品とは素材の必然性と作家なりのプロセスの必然性の交わるところ
に結実するのではないだろうか?
土岐謙次
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